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まず、今日の話の概要を説明します。
基本的にレセプトというのは診療録とか診
断書といった医療文書ではないわけです。病名等個人情報を含むのは事実ですが、法的に
は診療報酬の明細書、つまり請求書の一部です。したがって、ご存じのように、診断書と
か看護記録という医療記録に関しては医療や福祉の有資格者でなければ作成できないこと
になっていますが、レセプトは医療文書ではなくて金銭の請求書ですから、基本的に作成
するのに資格が要るわけではありません。現に医療事務とかレセプトの作成業者等、上場
している企業もあるわけです。
実際に保険者の側でレセプトをどのように活用してきたかといえば、専らレセプト点
検は、医学的な見地からというよりも、医療費の請求内容の妥当性をチェックする、とい
う見地から行なわれてきました。具体的にはレセプトの診療報酬の審査委員会において審
査されます。その審査委員のほぼ全員はドクターでいらっしゃるわけですが、それは
医学的な面つまり治療内容がどうであったかというのではなくて、医療費の請求の内容が
妥当であるか、そういう観点からレセプトの内容を審査するというのが従来の主な活用の
され方だったわけです。
私がこれまで取り組んできた内容は、法的にはお金の請求書にすぎないレセプトにに含
まれている医療情報を何とか活用できないか、日本は皆保険制をとっていますから事実上
全国民をカバーしている包括的な医療情報であるこの貴重な情報源は適正に活用すればい
ろいろな面に応用できるし、またそうしなければならないと考えたわけです。
いろいろな面に応用できる、と申し上げましたが、その一つは、市町村とか、あるいは
健康保険組合でもいいですが、ある集団における疾病構造を把握する目的で使うことです
。これはマクロ的な活用と言えましょう。
もう一つはミクロ的な活用、つまり一人一人について、その人の在院日数とか基本健康
診査後の受療状況、例えば健康診査の判定結果が本当にどれだけ的中していたかとか、そ
ういった個人単位の健康情報としても活用することができるでしょう。無論このことは本
日お集まりの皆様なら恐らく多くの人は気づいておられただろうと思います。
しかし、実際にそうした活用がなかなか今まで進まなかった理由は2つあると思います
。
一つは制度的な問題です。つまり医療費の請求書にすぎないものを保健活動に使うこと
が果たして制度的法的に許されるだろうか、という懸念です。どうしてもこういうものは
法律上、あるいは行政政策的な制約がつきまといます。この点に関しては、ここ数年大き
な前進がありました。
例えば在宅ケアを推進するためにレセプトを活用しよう、あるいは
重複・多受診者の保健指導のために活用しよう、そういった「レセプト情報を保健事業の
ために積極的に活用すべきである」という通達が中央からも盛んに出されるようになって
きました。こうした中央の方針は、レセプトの保健事業への活用の上で制度的な制約が少
なくなったということです。
さてもう1つは、技術的な制約です。情報を蓄積したり、例えば個人単位で活用しよう
と思えば、それを縦覧点検する必要があります。あるいは膨大な被保険者の中から特定の
疾病に該当する人を選び出すということが、今までは紙媒体であったがゆえに手作業に頼
るしかなかったわけです。それが大きな制約になっていました。皆さんも多忙ですから、
自分の目と指でもって膨大なレセプトを繰っていくことは、時間的にもなかなかできるこ
とではなかったということです。そういった点を中心に話していきます。