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薬剤に関する話をしましたが、実際にレセプトを保健活動に使う上
で最も手っ取り早く使えるのが傷病名であろうということです。先ほど紹介した今までの
社会医療診療行為別調査も国保医療給付実態調査も、ほかのレセプト調査にしても、ご存
じのように傷病分類がされています。例えば国民医療費で最も金額が大きいのは循環器疾
患であるとか、そういったものは何を根拠にしているかといえば、こういった全国調査を
もとにしているわけです。
そこではどのように分類しているかといえば、要するに単純にレセプトごとに、このレ
セプトは糖尿病、このレセプトは上気道炎というふうに1つに選択します。これを主傷病
選択法と言っています。レセプトに病名が1つしかなかったらこれでいいのです。
何ら問
題ないのです。しかし、レセプトには病名は1つしか書いてはいけないという規定ありま
せん。往々にして2つ以上、はっきり言って今はむしろ病名が1つしかない方が少ないく
らいになっています。
1つでしたら文句なしですが、2つ以上ある場合どうするかということです。そのとき
は、要するに診療点数の最も多いと思われる傷病を選べ。点数の大小によれない場合は症
状の重いと思われる方の傷病を選べということです。でも、例えば精神分裂病の患者さん
で血圧も高くて高血圧の治療を受けている人は、どちらが主傷病なのか? 精神分裂病と
血圧ではどちらが症状が重いのかというのは、もはや哲学的な論議です。
これの1つの問題点は、例えば虫垂炎で手術を受けた患者さんが肺炎を起こした。
その
ときたまたま手術はもう終わっていて、手術費用は余りなくて、専ら抗生物質がたくさん
使われていた場合には、そのレセプトは肺炎の患者さんというふうに分類されてしまいま
す。実際、社会医療診療行為別調査を見ていて、あれっと思われる意外な点は、肺炎と分
類されたレセプトの中に手術料が請求されているケースがあります。
肺炎に手術、といっても、これは決して過剰診療というわけではなくて、たまたま肺炎
が主傷病として選ばれたにすぎないわけです。この主傷病選択法の問題点は、今言いまし
たように、主傷病として選ばれてしまうと、そのレセプトの中のすべての診療行為、手術
料とか投薬、診察料とか判断料、そういったものがすべて主傷病のために使われたことに
なってしまうということです。
もう1つ、現在とにかく傷病名の数が増えているので、例えば健保連の側から主傷病を
1つに、あるいは病名の数を3つ以上書くなとか、制限を加えてくれという要望も出てい
るくらいです。それに近い方法は、アメリカの老人病院の支払い方法に取り入れられてい
るDRGというものです。要するに、主傷病というわけではないが、とにかくすべての患
者さんを 300幾つかのグループに分けて、主治医に頼んでどれか1つ、最も近いグループ
に入れてもらう。それによって支払う金額を決めるという定額制の支払い方法です。
実は日本でも一部この事業が行われています。鳥取県では参加している病院はないそう
ですが、幾つかの特に国公立病院を中心に、現在試験的に実験しています。例えばこれは
国が既に示しているDRGで試行請求している病院のための請求方法の通達からとってい
るものですが、合併症があったら1004というグループにする。合併症のない単純な糖尿病
であれば1005というグループにする。それぞれによって報酬を決めるというものです。
こ
れが導入されれば、DRGごとに分類すればいいので話は非常に簡単です。しかし、現在
のところDRGが全面的に導入される見込みはありません。
傷病マグニチュード按分法というのは、後で詳しく説明しますが、私が独自に考え出し
たものです。要するに、複数病名があるレセプトをどれか1つに決めて、それに当てはめ
るのは無理である。2つどころか、3つ4つ7つというふうに病名が増えてくると、それ
がなかなかできにくくなってくるわけです。そういう場合は、どれか1つに入れるのでは
なくて、それぞれの病気が重みを持っていて、そのために医療費が使われているというふ
うに解釈する分類法です。
私自身のPRも兼ねて、これのいいところをかなり話そうと思っていますが、その前に
、主傷病選択法は、まず第1に熟練が要ります。「ちょっとやっといて」とだれにでも頼
むわけにいきません。やはり病気の仕組みがわからなくてはいけないし、手作業ですから
時間と労力がかかります。もう1つは、選ぶ人の主観によって違ってきます。バイアスか
かってきます。後でお見せしますが、同じレセプトの 100枚の束でも、医師であったとし
ても選ぶ人によって全然違ってくるのです。社会医療調査のように全国的な巨大な47都道
府県の支払基金の国保連合会、計94に委託してやる調査であれば、個人のバイアスはやが
て薄められて一定するでしょうが、これが例えばある市町村の小学校区単位でやっていく
すと、去年やった人と今年やった人が違ったら、全然変わってくるおそれがあります。